真の建設DXとは?企業が抱える課題とDX推進による成功事例を解説

最終更新日:2025/04/15

建設テックの知恵袋 編集室

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慢性的な人手不足に直面し、働き方や組織改革が求められる建設業界では、建設DXが課題解決の鍵を握っています。

建設DXの第一歩は、デジタル技術でアナログ業務から脱却することであり、さらに、業務プロセスやビジネスモデルそのものの変革を目指していきます。

この記事では、建設DXの具体的な構造をはじめ、建設業界が抱える課題やDX推進の成功事例などを解説します。

なぜ建設DXが求められているのか、実際に何から建設DXを始めればいいのか悩んでいる方は、ぜひ最後までお読みください。

【目次】

  1. 建設DXとは
  2. 建設DXが注目される背景
  3. 建設DX推進に関する現状と課題
  4. 建設DXにおける3つのフェーズ
    1. デジタイゼーション
    2. デジタライゼーション
    3. デジタルトランスフォーメーション(DX)
  5. 建設DXを推進する代表的な手段
  6. 建設DXにおけるデジタルツールの導入効果
  7. 建設BPOによる建設DX推進事例
    1. 株式会社奥村組
    2. 飛島建設株式会社
    3. 戸田建設株式会社
  8. まとめ

建設DXとは

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建設DXは、建設業にデジタル技術を導入することで、業務プロセスやビジネスモデルを変革し、生産性向上や競争力強化を図る取り組みを指します。

単なるデジタル化にとどまらず、業界全体の構造的な変革を目指す包括的な概念として位置づけられています。

建設DXは、以下の3つのフェーズを踏んで初めて達成できるものです。

  1. デジタイゼーション:特定業務のデジタル化
  2. デジタライゼーション:業務フロー・プロセスのデジタル化
  3. デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用したビジネスモデルの変革

経済産業省が公表している「DXレポート」では、デジタルトランスフォーメーション(DX)について以下のように定義しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソ ーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデ ルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること
出典元:DXレポート~IT システム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~|総務省

DXへの取り組みは、人手不足や技術継承、安全性向上などの課題解決に寄与し、業務の自動化や省力化、情報共有の円滑化を実現します。

建設DXが注目される背景

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建設業界では、2024年4月に施行された働き方改革関連法への対応や、慢性的な人材不足、2025年の崖などの対策として建設DXが注目されています。

働き方改革関連法への対応

「働き方改革関連法」は、労働時間の上限規制や年次有給休暇の取得義務化、同一労働同一賃金などを柱とし、労働環境の改善を目指しています。

特に建設業界では、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用され、生産性向上や業務効率化が急務です。

このような課題に対し、建設DXは働き方改革を推進する欠かせない取り組みの一つです。

具体的には、クラウドシステムやAIを活用した現場管理の効率化、リモートでの情報共有の推進などが労働時間の短縮や業務負担の軽減に寄与します。

高齢化に伴う若手の担い手不足

日本の建設業界では、高齢化に伴う若手人材不足が依然として深刻な課題となっています。

国土交通省が「総務省の労働力調査(令和3年平均)」から推計した資料によると、建設業における60歳以上の技能者は全体の25.7%を占めています。29歳以下の割合は全体の12%に留まっており、若手技能者の確保および育成が急務です。

今後も続く人手不足の状況において、建設DXはデジタルで労働力不足を補い、持続可能な成長を実現するための鍵となります。

具体的には、AI(人工知能)やBIM、ドローンなどが課題解決策に挙げられ、少ない労働力でも高い生産性を維持することが可能です。

2025年の崖

「2025年の崖」とは、経済産業省が警鐘を鳴らす、日本企業が抱えるシステムの老朽化問題のことです。

老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システムのデジタル化が進まないことで、維持・管理に多額なるコストが発生し、2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生するリスクがあるとされています。

建設業界にも影響を与えており、非効率なアナログ業務や属人化の解消、さらには人手不足の解決策として、建設DXの重要性が高まっています。

参考元:DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜|経済産業省

建設DX推進に関する現状と課題

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株式会社フォトラクションが2024年3月に実施した「建設DXの取り組みに関する実態調査」で、多くの企業がDX推進の初期段階に留まっていることが明らかになりました。

本調査では、建設業に勤める施工管理担当者207名のうち、37.7%が建設DXの推進状況について「特に何もしていない」と回答。

クラウド型ソフトウェアを導入している企業は、27.5%に留まっています。

施工管理業務では、工事写真や図面の管理に専用ソフトウェアを使用する企業が多いものの、クラウド型ソフトウェアによるデータ一元管理はまだ少数です。

また、対象者の78.2%は、「生産性向上のために業務の標準化が必要だ」と感じており、66.7%が「ノンコア業務のアウトソースが必要だ」と回答しています。

しかし、現状ではアウトソースができている企業が27.5%に留まっており、今後の課題となっています。

建設DXにおける3つのフェーズ

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建設DXは、デジタイゼーション、デジタライゼーションというフェーズを経て、最終的にデジタルトランスフォーメーションへと進化します。

この重要な3つのフェーズに関して詳しく解説します。

デジタイゼーション

デジタイゼーションは、アナログな特定の作業をツールを使ってデジタル化することを指します。

例えば、以下のアクションがデジタイゼーションに該当します。

デジタイゼーション
  • デジカメでの写真管理をクラウドアプリへ移行
  • 紙の資料の情報をクラウド上で管理
  • 手書きの書類作成をExcelやクラウドアプリに切り替える

デジタイゼーションは、あくまで部分的な作業のデジタル化であり、既存の業務プロセスをそのままに効率化と生産性向上を実現します。

デジタライゼーション

デジタライゼーションとは、デジタルツールを使用し、組織全体の業務フローやプロセスを最適化することです。

建設業では、以下のようなアクションが該当します。

デジタライゼーション
  • クラウドサービスで図面や工程表などの情報を関係者間でリアルタイムに共有
  • 3次元モデルを作成し、設計から施工、維持管理までの情報を一元管理
  • IoTセンサーで建設機械や作業員の動きをリアルタイムで把握

この段階では、デジタル技術を活用して業務プロセスの効率化や生産性向上を図りますが、ビジネスモデル自体の変革までは至りません。

デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは、デジタル技術を駆使して組織やビジネスモデルを変革し、新たな価値を生み出すことを意味します。

例えば、建設業では以下のようなDXの事例があります。

デジタルトランスフォーメーション(DX)
  • 3次元化(BIM/CIM)や自動施工ロボットを活用し、従来の工法を根本から変革
  • 5G技術を活用し、建設機械を遠隔地から高精度で操作
  • 現実の建設現場をデジタル空間に再現し、シミュレーションや最適化を行うデジタルツイン

真のDXを実現するためには、技術導入だけでなく、組織文化や人材育成も含めた総合的な取り組みが必要です。

このように、建設DXは単なる業務のデジタル化だけに留まらず、デジタイゼーション→デジタライゼーション→デジタルトランスフォーメーションという段階を踏んで初めて実現します。

建設DXを推進する代表的な手段

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建設DXを推進するためには、AI、ICT、BIM/CIM、クラウド、ドローンなどの最新技術を活用することが重要です。

手段概要
AI
(人工知能)
建設現場のデータを活用し、業務の自動化や予測分析を行う技術。施工管理や安全対策、異常検知に利用される。
ICT情報通信技術を活用し、施工プロセスを効率化する技術。電子小黒板やセンサー、IoTデバイスを用いたリアルタイム管理が中心。
BIM/CIM建築・土木における3次元モデルを利用した設計・施工手法。
3DCAD建築・土木設計で使用する3次元の設計データ作成ツール。部品の詳細設計や全体の構造解析などに利用される。
クラウド建設現場や事務所での多様なデータを一元管理し、リアルタイムで情報を共有できるオンラインプラットフォーム。
デジタルツール建設プロジェクトに必要な各種業務を効率化・デジタル化するためのソフトやアプリ。
ドローン空撮や測量に利用される無人航空機。高精度なデータを短時間で取得できる。
5G高速・大容量通信を可能にする次世代通信技術。現場でのリアルタイム映像伝送や遠隔操作に利用される。

建設DXにおけるデジタルツールの導入効果

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株式会社フォトラクションは、2023年9月29日〜10月10日に「建設現場のDXに関する実態調査」を実施しました。

同調査では、建設業の施工管理担当者209名のうち、50%以上が「施工管理の生産性向上のためのデジタルツール」を導入済みであることが明らかになりました。

さらに、そのうちの70%が「デジタルツールによる業務時間の削減」を実感しています。特に、写真管理や図面管理などの業務で効率化が進んでいることがわかっています。

また、デジタルツールを導入している企業では、20代・30代の施工管理担当者の約80%が仕事に「やりがい」を感じていることがわかりました。

一方、導入していない企業では「やりがい」を感じている割合が半数以下に留まっています。

この調査結果からわかるように、建設現場におけるデジタルツールの導入は、生産性向上と従業員の満足度向上の両面で顕著です。

建設BPOによる建設DX推進事例

工事完了報告書6

建設BPOとは、建設業務プロセスアウトソーシングのことで、建設業界における業務効率化とコスト削減を目的とした外部委託サービスです。

建設DXにおいては、デジタライゼーションを実現する有効な手段です。ここでは、株式会社フォトラクションの『Photoruction』を活用した建設BPOおよびDXの推進事例を3社紹介します。

株式会社奥村組

大阪に本社を置く「株式会社奥村組」様は、1907年創業の総合建設会社です。

同社は土木事業、建築事業、開発事業を主な事業としており、以下のような課題を解決するため、Photoructionを導入しました。

導入背景
  • 工事所職員の業務負担軽減と残業時間削減のため、効率的な工事写真管理と検査業務支援ツールが必要だった
  • 2024年4月からの「時間外労働の罰則付き上限規制」に対応するため、工事所業務の標準化と内勤部門での支援体制構築が急務だった
  • 複数の業務を一つのICTツールで完結させ、全社統一のルールを設けることで業務の効率化と標準化を図りたかった

導入効果
  • 撮影した写真がリアルタイムでクラウドにアップされ、写真整理業務が大幅に削減された
  • 図面や検査シートのデジタル化により、準備時間と労力が削減され、検査記録の品質も向上した
  • 支社店の技術部門がリアルタイムで写真を確認できるようになり、タイムリーな指示出しが可能になった

PhotoructionのBPOサービスは、建設業に特化しており、同社のニーズに即したサービス内容であったことが導入の決め手になりました。

また、同社では工事所によってバラバラだった写真や図面管理の仕様が統一され、「業務の標準化につながった」と評価しています。

【関連記事】株式会社奥村組|Photoruction導入事例

飛島建設株式会社

「飛島建設株式会社」様は、東京に本社を置く創業140年以上の歴史を持つ総合建設会社です。

土木・建築工事を総合的に請け負っている同社では、以下のような背景からPhotoructionを導入しました。

導入背景
  1. 現場での作業負担軽減のため、写真管理の効率化を目指していた
  2. 複数のツールを使用していた写真管理を一つのツールに統合したいと考えていた
  3. 時間と手間のかかる施工計画書の作成を外部委託したいと考えていた

導入効果
  1. 撮影時の黒板選択ミスが減少し、写真管理の作業効率が向上した
  2. リアルタイムで簡単に情報共有が可能になり、現場管理がスムーズになった
  3. 施工計画書作成の手間が削減され、さらに管理におけるルールの策定が捗るようになった

同社はPhotoructionの建設BPOに対して、「とにかく痒いところに手が届くサービスであり、ニーズに合うものだった」と高く評価しています。

今後は、Photoructionを全社で統一して使用し、さらなる業務効率化を目指すとともに、デジタル化の推進やデータベース化による業務改善を図っていく方針です。

【関連記事】飛島建設株式会社|Photoruction導入事例

戸田建設株式会社

1881年創業の歴史と伝統を誇る「戸田建設株式会社」様は、東京に超高層複合用途ビル「TODA BUILDING」を持つ総合建設会社です。

同社では、かねてから建設BPOの全社導入を計画しており、以下のような理由でPhotoructionを導入しました。

導入背景
  1. 2024年の働き方改革関連法施行に向けて、作業所の業務実態と時間の使い方を見える化する必要があった
  2. 作業所で発生する定型事務作業を効率的に実施できる環境を構築したいと考えていた
  3. BPOサービスの活用を促進し、作業所の業務負担を軽減したいと考えていた

導入効果
  1. BPOサービスに依頼するハードルが大幅に下がり、作業所の業務負担を簡単に削減できるようになった
  2. 約20のBPOメニューを簡単に選択・依頼できる仕組みを整備したことで、管理の効率化が進んだ
  3. 社内システムとPhotoructionのAPI連携により、アカウント管理が円滑になり、職員が安定してシステムを使用できるようになった

Photoructionには、写真管理や検査機能、帳票作成ツールなどの多機能が備わっており、さらにデザインや直感的に使いやすい点も好評を得ています。

同社は今後、Photoructionに蓄積されたデータを基に作業所のニーズを把握し、「さらなる業務効率化と生産性向上を目指していきたい」と話しています。

【関連記事】戸田建設株式会社|Photoruction導入事例

まとめ

建設DXの成功には、デジタイゼーション(特定業務のデジタル化)からデジタライゼーション(業務プロセス全体の最適化)、そしてビジネスモデル変革を伴う真のデジタルトランスフォーメーションへと段階を進めることが不可欠です。

株式会社フォトラクションでは、建設生産に関する業務を一元管理するプラットフォーム『Photoruction』と併せて、クラウド型建設BPOサービスを提供しています。

多様な業務プロセスのメニューをご用意しており、数クリックで簡単にノンコア業務をアウトソーシングできます。さらに、電子小黒板や施工計画書の作成などの業務プロセスの標準化をサポートし、属人化の解消に貢献します。

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