創業120年の地方ゼネコンが「建設DX」に成功したコツ
最終更新日:2022/04/19
インタビュー

平山建設株式会社 代表取締役社長 平山 秀樹
創業明治34年(1901年)、平山商店として木材の営業からスタートし建築請負業へと業務を拡大。1962年に平山建設株式会社が設立され、建設業へ本格参入。都内などの大都市圏ではなく、所在地である成田市にビジネスの軸足を集中させる事により、一時低迷していた企業規模を大幅に回復、官民連携による京成成田駅前の開発など業務拡大を続けている。
SFA(営業支援システム)の導入失敗。建設DXは現場目線が大事
しかし、全ての取り組みがうまくいったわけではありません。日報や顧客管理、現場の施工状況、現場の台帳まですべて同じシステムで管理しようとして、カスタマイズも含め結構な費用をかけ、SFA(営業支援システム)を導入しました。しかし、いくら社内での利用を促しても思うように浸透しませんでした。
その一方、GoogleカレンダーやGoogleMapはみんなが使えるようになってきていて、各部署がそれをカスタマイズして情報の共有や管理を行う流れを作っていました。誰もが使えるツールを使うことによって社員が求めるものを実行でき、みんなで利用できるようになっていきました。社員が自主的にやりやすいパターンを見つけてくれていたのです。
結果、大きな費用をかけて作ったSFA(営業支援システム)は使われなくなりました。大きな構想の元に、全部を整えて大掛かりにはじめても、現場で受け入れられなければ意味がありません。使う側の社員が「便利だな」と感じ、最初から簡単に使えるというのがとても大切だと分かりました。
小さいことから始めて、社員全員のリテラシーを上げていけば、次の展開には簡単に進むことができます。建設DXを進めるにあたって大切なのは、小さくはじめてそれを育てていくことではないでしょうか。小さい力も育てていくことで大きな力になり、会社全体の力になり動いていきますから。
今の教育が10年後の平山建設を創る
平山建設の現場では、Photoructionを使うのが社員の基本となっています。これも現場から小さく育ってきた成果のひとつです。導入初期からPhotoructionスタッフの方からきめ細かい「教育」をいただきました。いまでは平山建設の現場の必須のツールです。先日も現場の竣工検査で、細かく指摘事項が入ったのですが、その指摘事項も写真付きですぐに資料として出すことができました。
Photoructionを使うと簡単という社員がいて、それがしっかり浸透してきました。社員が簡単に便利に使えると自主的に思うことが、IT化を進めるにはとても重要だと実感しています。
同時に、建設DXや働き方改革を進めるにあたって、改めて先代たちが進めていた教育がもっとも大事だということが分かりました。平山建設の社員はもちろん、協力会社さんを含めて、いかに全体のITリテラシーをあげていくかが大切になってきます。現在は、働き方改革推進リーダーを決め、現場を巡回してPhotoructionなどのITツールの使い方も含め指導を行っています。
先代たちが成し遂げてきた人の教育とか新しいテクノロジーを積極的に取り込むなど、全ては今の建設DXにそのまま繋がっていると思っています。
平山建設は、現場監督が育つ風土、社風があると自負しています。昔からずっと新卒にこだわって採用に力をいれていて、当社の建築の技術者は9割以上が新卒で入社しています。社員が育つのは、全体として常にお手本になる人がいるということです。砂浜に文字を書くではないですけど、何度流されても文字を書き続けるといったように教育を続けていくことが重要です。
10年前に何をやっていたか、何を準備していたかが「今」に現れます。今やっていることは10年後に現れると思っています。教育を大切にし、より良い未来を作りたいと思っています。
BIMと積算ソフト・構造計算ソフトを連携したい
とはいえ、まだまだ課題もあります。今後は、BIMとクラウドをどう共存させていくかが課題です。
構造事務所からのデータをBIMに取り込んだり、BIMxを指示に使ったりと、現場の職長レベルまで共有するところまでは出来ています。設計事務所とはBIMモデルの共有はできていますが、それを設備業者から現場の職長まで、進捗も含め全体像が把握できるようにし、もう一歩先に進みたいと思っています。積算ソフト、構造計算ソフトなどがBIMと連携するといいですね。
また、平山建設の社員だけではなく、協力会社さんまで広めていくことで建設業界全体の働き方改革につながると思っていますので、その観点からも引き続き建設DXを推進していきたいと思っています。