創業120年の地方ゼネコンが「建設DX」に成功したコツ

建設テックの知恵袋

平山建設株式会社 代表取締役社長 平山 秀樹

創業明治34年(1901年)、平山商店として木材の営業からスタートし建築請負業へと業務を拡大。1962年に平山建設株式会社が設立され、建設業へ本格参入。都内などの大都市圏ではなく、所在地である成田市にビジネスの軸足を集中させる事により、一時低迷していた企業規模を大幅に回復、官民連携による京成成田駅前の開発など業務拡大を続けている。

タブレットの導入で電話・移動時間・手戻りのムダ削減

「なぜ私達は忙しいのか?」という話になりますが、時間が足りないと忙しいと感じます。では一体何に時間を奪われているのか? 社内で分析すると、電話、移動時間、手戻りがトップ3ということが分かりました。

例えば、現場監督は現場の職長さんに確認のために一日何度も電話をかけます。電話は1対1の手段なので、人数が増えれば増えるほど、その対応に時間を取られてしまいます。電話すればするほど、何でも電話で済ませれば良いのだと現場の職長、職人さんからのコールバックも増えてしまう。確認のために、何度も移動をしないといけないし、その移動時間は何もできない、情報の行き違いなどで手戻りが発生する。そうすると、時間がどんどん奪われて、心を亡くす、つまり忙しいのです。

それを改善するために、まずIT教育を施したメンバーが始めたのが、現場にタブレットを導入し、情報共有を図るということでした。

Google Workspaceの機能を使って図面などの情報の共有や、チャット機能を取り入れたコミュニケーションなどを行いました。その結果、記録が残るので電話での同じことの確認が減り、打ち合せなどで時間を取られることが少なくなりました。

建設現場の4週8休、残業なしを実現した「テコの原理」

これまでは、組織のコミュニケーションの混乱を防ぐためには、公式な確固たるリーダーの1人がすべての情報をコントロールしていました。しかし、このやり方では、24時間365日現場に張り付いていないと現場が動かないといったことも発生します。

また、以前は情報共有をする際、情報ファイルをメールでファイルを送るなどしていました。そうすると、どれが最新のものなのかが分からなくなってくるのです。業務に関係する人数が増えれば増えるほどその問題は発生します。そこで、常にひとつのファイル、ひとつの情報を扱うような方法に変えようということにしました。業者さんまで巻き込んで情報共有が出来れば、リーダー1人に頼るのではなく、みんなに伝わるコミュニケーションが図れます。

社員には常に「テコの原理を使った仕事をしよう」と伝えています。大きな仕事もしっかりした計画の上に会社全体での情報共有ができていれば、1人では動かせないことも簡単に動かすことが出来るのです。この方法がうまくいきました。導入時は、ITリテラシーのばらつきもあり多少難しがっていた人もいましたが、一人ひとりにきめ細かく対応し使えるように指導してきました。

特に「サイト」と呼ばれるホームページ形式でドキュメント、カレンダーなどの表示、リンクを明示した情報共有は有効でした。職長さんクラスまでこの「サイト」の使い方を「教育」をすることで、現場の一般的な情報は「ひとつのファイル」で共有できるようになりました。最初は「俺が頼んだわけでもないのに、なんでこんなことをやらされるのか?」と反発もありました。しかし、何度も夜に集まってもらいGmailのアカウントの取り方から、サイトの見方などを「教育」することで現場担当者にかかってくる電話の本数も三割ほど減りました。 そして、今ではこの方法を導入した現場では、残業も発生せず、4週8休が完全に取れるようになりました。

DX化の基本は社員がみんな同じ方向を向くこと

DX化を推進するにあたって大切なのは何か?私はDX化、働き方改革を行っている中で、「毎日ニコニコしながら家に帰れるような働き方を社内に定着させる」と目標を定めました。この目標を社員みんなで共有しています。

目標や理念を共有している仲間であれば、みんながみんなのためになる仕事をして、1人5%ずつみんなの生産性が上がればすごい力になります。

例えば、出退勤管理をタイムカードで行っていたのですが、それまで計算に担当者が3日かかっていました。それをクラウドサービスに変えて2時間で終わらせることが出来るようにしたり、朝礼、経営会議、営業会議などにすべてリモートミーティングを導入し、参加率を向上させたりと成果が表れています。

また、コロナでテレワークを余儀なくされた時も、問題なくすんなりと導入できたのもすぐに社員が自主的に管理台帳を作るなど、みんながみんなのために仕事を進めてくれたからだと思います。

目標実現のために何をするのか、どう動くのか、常に考え社員がみんな同じ方向を向くことで、業務が効率良く進むようになりました。

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