【建設AI対談 – 後編】建設業界にもAIが「あたりまえ」になった未来に、それでも「人間」ができることは
最終更新日:2022/04/15
インタビュー

建設テックの知恵袋 編集室
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コロナによる社会変容、未来の建築における「価値」とはなにか
石田:今日の対談は集まって収録しましたけど、コロナでこれだけテレワークが進むと、オフィス必要ないじゃんって声が出てきますよね。なかなか大変な時代ですよ(笑)。
中島:僕たちもテレワークは行っていますが、建設業を応援するベンチャーとしては、まだまだオフィスは借り続けたいし、うまく活用方法を考えたいなと思っています。

石田:最近、組織設計の人たちもテレワークしてて「これからオンラインの働き方も含めてコンサルティングしていく」とか言い出してるんですけど、それ、Zoomをオフィスと同じ価値があると認める行為ですよね。スケールがどんどん小さくなって、IT技術の賑やかしとして建築がついてくるみたいな方向に、みんな自ら行ってませんかね。あれは建設業的に許されるのかと僕は怒ってますよ(笑)。だからフォトラクションは絶対現場にいた方がいいと思う。
中島:はい、僕も現場はずっと大事にしていきたくて。事業的には、リモートワークが普及すればするほど僕たちのサービスは売れやすくはなるんですけど、でもやっぱりそれも、現場の建設があってこそですから。
石田:ポジショントークでも、今こそ建物の価値ってものを言わないといけないと思いますよ。僕はそこはすごく危機感を持っています。
中島:そうですね、でもこの話って本質的には、さっきの図面1枚あたりいくらで良いんだっけって問題と繋がっていると思うんです。建設業の中で、何を「価値」と捉えて、お金に変えていくのかという問題ですよね。
小笠原:分散化していくっていう話もありますよね。やっぱり一極集中しすぎなんじゃないかってことで、計画系の先生とかの話だとやっぱり各私鉄沿線のキー・ステーションとかにもう少し集まって働けるような場所ができたりとか……。
中島:オフィスがゼロになるってことは考えにくいですが、そのオフィスのあり方が変わることは間違いないですね。今日の対談みたいに、発散的なコミュニケーションをする機会は、やっぱりオフラインで集まらないと話せないですし、他にもたとえば、「集中デー」みたい日を決めて月に1回は集まるとか。一方で、普段の進捗共有とか、意思決定するだけの会議はむしろオンラインの方が効率よくなってきていますね。
僕はやっぱり、オフィスは必要だと思っていますが、またみんな毎日出勤して仕事するかって言われると、コロナが収束しても、元の生活スタイルに完全に戻るのは難しくなっていると思います。だからやっぱり、オフィスを含む建築の「価値」って何なのかという問いに戻ってきちゃいますね。
最後にまた先生方に、「価値」という観点から、今後のAIスクールの活動や、建築×AIの展望について、お話をお聞きできれば嬉しいです。

石田:AIの本番は、AIが設計した設計案を大衆が受け入れるかだと思うんですよね。つまりハウスメーカーとかの、ああいった住宅を買うときにAIが設計した「AI設計者」がそのうちでてきて、あれがプロの建築家と戦った時にどっちが支持されるかっていうのが本番ですね。結構ね、僕はそれを危惧していて、設計界はAIに浮かれてるなって感じがします。「AIがたくさん案を出してくれて、それから良いものを選ぶ審美眼が問われるんだ」みたいなことを言う人が結構最近多いんですけど、もうそれはAIに使われてるんじゃないのって感じるわけです。やっぱり普通の設計だったらAIができるんだったらAIがやるしかないし、安いかもしれない、将来的にはスケールメリットで安くなるかもしれないから、何かそういうときに、世の中がどっちに振れるかが、建設業におけるAIがどう受け入れられていくかのターニング・ポイントだと思います。それが「価値」って何だろう?という問いにも関係するかなと。
中島:将来的には感情的な評価もできてくるんじゃないですかね。
石田:「こんな家が欲しい」と話しかけて設計してくれるAIが例えば出たときに、「そっちでいいんじゃないか」となる未来を思うと、いよいよ我々の世界も苦境に立たされますよね(笑)。
小笠原:今までは「現実社会の中で、何だったらAIに置き換えることができるのか」っていう視点で語られてきたのが、そろそろ終わりになってきていて、徐々にいろんなことを一通りAIができそうだなというふうになってきた。
今度は「何がAIにはできないのか」っていう視点、AIに置き換えることが難しいこと自体を模索していく必要が高まってくるはずです。それは、恐らく中島さんたちみたいなプロの方の視点も必要ですし、AIスクールのような学生的な視点というか、より自由な視点が大切になってきますよね。これはやっぱり人間じゃなきゃできない、どうしたってAIには無理だっていうことを探していく作業が、思った以上に大事になってきているのかなと思ってます。

中島:そうですね。数字で判定できることは、全部AIに置き換わっていっちゃうから、そういう意味では確かに、どこが人の心を動かすのか、みたいな。
志手:AIに特別なものを期待すること自体が徐々になくなっていって、AIはより当たり前の存在として、日常生活の中に溶け込んでいくっていう状況になっていきますね。
結局、学習させるデータがたくさんあれば、「AIが学習してなんらかの答えを出す」っていうことが、ありとあらゆるところで成り立つわけです。例えば最近びっくりしたのが、Googleドライブの中にスキャンしたPDFの論文をたくさん入れていたんだけれども、検索したら引っかかってくれるんですよね。あれって全部中でOCR解析してくれていると思うんですけども、そのようなことが日常的に行われていく中で、それを疑いもせず使っていくっていう世代がこれからどんどん出てきます。

志手:だからこそ、「AIってそもそも何だっけ」っていうのをちゃんと知っている人材が必要になります。「この結果、何かおかしくないか?」と、AIが出した結果を全部鵜呑みにしないような、そういう視点や思考を持つことが極めて重要になるのではないかと思います。
今後のAIスクールでも、本質がわかる人材を育てていけるよう、引き続きよろしくお願いしたいですね。
中島:それは本当に重要なミッションですね。がんばります!先生方、今日は本当にありがとうございました。
