建築本部 生産技術イノベーション部 生産技術ソリューション推進室 室長 田中 吉史さん 札幌支店 建築部 技術室 課長 中西 修一さん
大成建設株式会社
数万枚の工事写真を、現場全体で扱える共通基盤へ
―Photoructionの導入・展開を進めた背景を教えてください。

札幌支店 建築部 技術室 課長 中西 修一さん
田中さん:
今の建設業は、写真で品質を保証する場面が多く、大規模現場では5万枚、10万枚という単位の写真を扱います。多くの人が撮影し、工期の途中で担当者が替わることもあるため、写真を整理し、後から必要なものを検索できる状態にしておくことが重要です。
Photoructionは、早い段階からクラウドを前提としていた点も印象に残っています。今では一般的になりましたが、コロナ禍以前は、クラウド上で情報を共有し、複数人で現場を管理する働き方は今ほど定着していませんでした。当時としては先駆的なアプリだと感じていました。
中西さん:
札幌支店では以前の大規模現場でも活用しており、クラウド上で共同管理できることにメリットを感じていました。今回のような規模の大きい現場では、写真を撮る人も整理する人も多くなります。誰かが操作している間も、ほかの人が同時にアクセスでき、写真が増えても速度面のストレスが少ないことは、日常的に使い続けるための大切な条件です。
また、工種や工区などの運用をそろえておけば、膨大な写真の中から必要な一枚を探しやすくなります。準備工事から竣工まで長く使うほど、その価値が大きくなると考えました。
導入して終わらせない。本社・支店の伴走で現場に根づく仕組みへ
―現場への導入・定着は、どのように進めているのでしょうか。

田中さん:
アプリの機能が整っていても、それだけで現場に活用が定着するとは限りません。活用が進まない要因は、機能より運用面にあることが多いと感じています。大規模現場では、絞り込み情報、フォルダ、電子小黒板などの初期設定をあらかじめそろえ、現場の管理者だけでなく、サービス提供側や社内の支援部門も一緒に運用を設計することが重要です。初日からすべての機能を使うのではなく、まずは写真管理から始め、理解に応じて活用範囲を広げます。「必要な時に、必要なものを、必要なだけ」渡しながら、現場の横に立って伴走することが大切だと考えています。
建設は一品生産で、現場のタスクも日々変化します。導入効果を操作時間だけで測るのは難しいと考えています。私たちは、利用した現場から「楽になった」「これいいね」という声が出るかどうかも、実態に近い指標として大切にしています。
中西さん:
札幌支店では、ICT支援担当が初期設定や教育を支え、本社ICT支援部隊(通称:ICTキャラバン隊)(*1)も定期的に現場を訪れています。新しい担当者が加わるたびに運用ルールを伝えるのは現場だけでは負担が大きいため、設定や教育を継続して支えてもらえることは助けになります。
今回の現場で得た要望や改善点は、この作業所だけの知見で終わらせず、札幌支店の標準として次の現場へ引き継ぎたいと考えています。ゼロから設定するのではなく、ある程度整った状態から始められれば、導入初期の負担を減らし、活用を早く定着させられると思います。
(*1)ICTキャラバン隊:現場のICT活用を支援する大成建設独自の取り組み。Photoructionを含む17社・約100名の外部人材が、年間約300か所の作業所を訪問し、デジタルツールの定着を伴走支援しています。
従来の7割に。写真業務を一つの環境で
―現場では、日常的にどのように使っていますか。

江刺家さん:
日常的には、工事写真の撮影・整理状況を確認しています。クラウド上で、誰が、いつ、何を撮影し、どこまで整理しているかを把握できるため、必要な写真の不足や撮り直しを工事担当者が現場にいるうちに伝えられます。
事務所に戻ってから不足に気づくケースが減り、撮り忘れや撮り直しの防止にもつながっています。
この現場は工期が長く、扱う写真も膨大です。作業所のルールに沿って工種や工区などの情報を付けることで、必要な写真を絞り込みやすくなりました。帳票の整理状況も確認できるため、全体の進捗を把握しやすいと感じています。
佐々木さん:
パトロール時の写真撮影に加え、写真の整理や台帳作成にも使っています。写真に工種や工区を入力し、必要に応じてコメントを修正しています。台帳では写真の入れ替えや空白の挿入、列の調整まで画面上で操作できるため、撮影から整理、台帳作成までを一つの環境で進められる点を使いやすいと感じています。電子小黒板の設定などで迷ったときは、チャットで回答をもらえました。説明会もあり、分からないことを確認しながら進められるため、使い始めの段階でも止まらずに作業できています。
東海林さん:
以前の現場でも利用していたため、今回も大きく迷わず使い始められました。撮影した写真がすぐにクラウドへ上がり、その場から整理できるため、事務所に戻ってからの作業を減らせる点は便利です。画面の動作も軽く、写真を確認しながら作業を進めやすいと感じています。
また、竣工間際に必要になりそうな箇所は、スナップ写真として残しています。撮影時点で検査に必要か分からない写真も、後から確認できるよう気軽に保存できる点に使いやすさを感じています。
リアルタイム共有で、事務所に戻ってからの作業を軽減
―導入後、仕事の進め方にはどのような変化がありましたか。

係長 江刺家 庸史さん、佐々木 寛誠さん
江刺家さん:
写真整理にかかる時間は、あくまで体感ですが、従来の7割程度になった感覚があります。撮影から確認、整理までを同じ環境で進められることが、作業時間の軽減につながっています。
佐々木さん:
写真を一括で選択・編集できるため、一枚ずつ修正するよりも整理の手間を省けています。使い始めたばかりなので、所要時間の変化は今後確認していきたいです。
東海林さん:
現場で撮影した写真をその場で確認し、整理まで進められるため、事務所に戻ってから行う業務が減りました。時間と場所を飛び越えて作業できるようになった感覚があり、撮影後にまとめて整理していた以前の方法には、もう戻れないと感じています。
同じ写真を見て指示し、協力会社とも情報をつなぐ
―本社・支店・現場、そして協力会社との連携にはどのような効果がありますか。

江刺家さん:
現場で使用する電子小黒板と入力項目をあらかじめ整え、「この黒板を使い、ここにこの内容を入れてください」と具体的に共有するルールを設けました。同じルールに沿って撮影することで、記載内容の確認や写真の整理し直しが減り、品質管理書類もまとめやすくなりました。帳票作成まで見据えて情報をそろえられます。
佐々木さん:
写真整理を複数人で同時に進められる点も助かっています。撮影した写真がすぐに共有されるため、データの受け渡しを待たずに整理を始められます。
東海林さん:
離れた場所でも同じ写真を確認できるため、今後は社外の方も参加できる共有の場を設け、職長会パトロールで撮影した是正前・是正後の写真を一緒に確認できると便利です。必要な写真を簡単な帳票にまとめられれば、協力会社との情報共有にも活用しやすくなると思います。
中西さん:
札幌支店では、図面上にピンを置き、決めた電子小黒板を紐付けて撮影する運用にも取り組み始めています。施工状況の見える化や撮り忘れの防止に加え、複数名で役割を分担しやすくなることを期待しています。
田中さん:
本社、支店、作業所、協力会社が同じ環境で情報を受け渡せれば、担当者が替わっても次の人へ引き継ぎやすくなります。同じプラットフォームに記録が残れば、施主や設計者、監理者との確認や、遠隔での検査にもつなげられると考えています。
写真管理の先へ。AIによる整理支援、検査、電子納品へ広がる活用
―今後、さらに活用したい機能や期待することを教えてください。

江刺家さん:
現場で使い始める際には、写真の分類ルールや電子小黒板の設定を一から決める必要があります。表記方法の違いで写真分類が分かれることもあるため、他の現場で使われている分類方法や設定例を標準サンプルとして示してもらえると、導入時のルールを決めやすくなると思います。
撮影時には複数の電子小黒板を切り替えるため、履歴を種類別に表示したり、よく使う黒板をお気に入りとしてまとめたりできると、必要なものを探しやすくなります。
佐々木さん:
黒板や書類を工種などで階層化し、必要なものをたどって探せるようになると、より使いやすいと思います。
東海林さん:
工事写真は、品質や施工内容をお客様に証明するものです。帳票の余白や字体、工種名、黒板の大きさなどを提出先に合わせて調整できると、より見やすい記録になると思います。
また、狭い場所や無理な姿勢で撮影すると、画面に触れて電子小黒板がずれることがあります。撮影中に黒板の位置を固定できる機能があると助かります。
中西さん:
今後は、撮影した写真をフォルダへ自動的に振り分けるなど、分類を支援する仕組みに期待しています。写真情報の入力を選択式にして表記のばらつきを防げれば、現場ごとのルールを周知する負担も軽くなります。配筋検査の電子化は、社外の監理者からも話題に上がっています。検査を確実に行いながら記録と引き継ぎをしやすくし、将来、遠隔地から承認できれば、限られた時間でより広い範囲を確認することにもつながると考えています。
田中さん:
現場ごとの規模やルールに合わせて写真の整理方法を提案し、表記の違いでデータが分散しそうなときには、AIが候補を示して修正を促す仕組みに期待しています。一方で、デジタル化そのものを目的にせず、現場や監理者が状況に応じて手段を選べることも大切です。ツールだけに任せるのではなく、人が考え、判断するプロセスと組み合わせながら、フォトラクションと一緒に現場をより良くしていきたいと思います。
―今後も引き続きサポートさせていただきます。お忙しい中、貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!