グリーンファイルとは?元請け・下請け企業に必要な安全書類と提出義務
最終更新日:2025/02/21
工事現場の基礎知識

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建設業においてグリーンファイルの管理に手間取ったり、安全書類の提出漏れで元請け企業から指摘を受けたりした経験はありませんか?
グリーンファイルの種類は多岐にわたり、書類に応じて法律に準拠した作成および管理が求められる場合もあります。
この記事では、元請け企業と下請け企業それぞれが提出すべき主要なグリーンファイルをわかりやすく解説します。
【目次】
- グリーンファイル(安全書類)とは
- 【下請け企業】主要なグリーンファイル一覧
- 【元請け企業】主要なグリーンファイル一覧
- 【一人親方】主要なグリーンファイル一覧
- グリーンファイルと併せて必要な提出書類
- グリーンファイルの作成・管理を効率化する方法
- グリーンファイルに関するQ&A
- まとめ
グリーンファイル(安全書類)とは

グリーンファイルとは、建設業における業界用語で、下請け企業が元請け企業に提出する安全書類の総称です。
安全書類とは、労働災害防止や法令遵守を目的とした各種書類のことです。作業員名簿や施工体制台帳、安全衛生計画書などが含まれます。
これらの書類の適切な管理・提出によって、工事現場の安全確保と労務管理の透明性が向上します。
安全書類をまとめるファイルの色が緑色であることから、グリーンファイルと名付けられました。
元請け企業は、下請け企業から提出された安全書類を整理・保管し、必要に応じて発注者や行政へ提出します。
グリーンファイルの管理は、現場監督者の重要な役割の一つとされ、工事現場の円滑な運営に欠かせないものです。
【下請け企業】主要なグリーンファイル一覧

下請け企業は、元請け企業に対して作業員の安全を確保し、法令を遵守するための各種書類を提出する必要があります。
ここでは、下請け企業が作成・提出する主要なグリーンファイルを紹介します。
再下請負通知書
再下請負通知書は、「建設業法第24条の7」に基づき、元請け企業に再下請業者を使用する際に提出が義務付けられている書類です。
元請け企業はこの通知書によって工事に関与するすべての業者を把握し、現場の安全管理を徹底します。
加えて、再下請負通知書の提出がなければ元請けは再下請業者の管理を行えず、現場での責任の所在が不明確となり、法令違反になる恐れがあります。
下請負業者編成表
下請負業者編成表は、工事に関わるすべての下請け業者を一覧で記載した書類です。
「労働安全衛生法(安衛則第627条)」に基づいた作成が義務付けられており、一定規模以上の工事現場では必須です。
業者名や工事内容、責任者名を明記し、元請け企業が施工体系図を作成する際の基礎資料となります。
施工体系の明確化は、現場に関与する全業者の責任範囲を可視化する効果もあり、労務トラブルや責任問題の回避に役立ちます。
作業員名簿
作業員名簿は、現場に従事する作業員の氏名、住所、雇入れ日などを記載する書類です。
これにより、元請け企業は作業員の雇用状況を把握し、適切な安全対策を講じます。
作業員名簿には、緊急時の連絡先も記載することが推奨されており、万一の事故に迅速に対応するために活用されます。
外国人建設就労者現場入場届出書
外国人建設就労者現場入場届出書は、技能実習生であった外国人を現場で働かせる際に提出する書類です。
外国人建設就労者の現場入場に関しては、「外国人技能実習制度」および「特定技能制度」に基づく管理が求められます。
特に技能実習生の場合、労働基準法、入管法に加えて、「外国人技能実習適正実施法」に基づき、適切な指導や管理を行わなければなりません。
また、外国人労働者に対する日本語での安全教育も重要で、元請け企業は外国人作業員が十分に理解できる環境を整える義務があります。
高齢者就労報告書
高齢者就労報告書は、現場で働く60歳以上または65歳以上の高齢作業員の情報を記載した書類です。
高齢者の健康状態に配慮した労務管理を行い、事故を未然に防ぐことを目的に作成します。
高齢作業員に対する特別な安全配慮義務については、「労働安全衛生法第60条(安全衛生教育)」および「高年齢者雇用安定法」に基づく指導が求められます。
必須の書類ではありませんが、元請け企業から要求されるケースは多いです。
年少者就労報告書
年少者就労報告書は、18歳未満の作業員を雇用する際に提出する書類です。
年少者の就労に関しては「労働基準法第61条」に基づき、「満18歳未満の者に対して危険有害業務を行わせてはならない」と規定されています。
現場に年少者がいない場合は作成の必要はありませんが、提出する場合は安全面を特に重視した管理が求められます。
安全ミーティング報告書
安全ミーティング報告書は、定期的に行われる安全ミーティングの内容を記録した議事録です。
元請け企業や下請け業者間で情報共有を行い、安全対策の進捗を管理するために用いられます。
ミーティング内容を記録するだけでなく、改善事項を明確にし、次回までの対応策を示すことが求められます。
新規入場時等教育実施報告書
新規入場時等教育実施報告書は、新たに現場に入場する作業員に対し、安全教育を実施した際に作成する書類です。
元請け企業に提出することで、作業員が必要な安全教育を受けたことを証明します。
特に新規入場者には、現場特有のリスクについて十分に理解させることが重要です。
工事・通勤用車両届
工事・通勤用車両届は、現場に持ち込む車両について車両の種類や台数を記載する書類です。
大型車両による事故を防ぐため、車両の安全性を確保することが求められます。
また、現場での駐車スペースや車両の動線を考慮し、混乱を防ぐ工夫も必要です。
持込機械等使用届
移動式クレーンや車両系建設機械の操作には、労働安全衛生法および「安衛則第20条」に基づく資格者が行うことが義務付けられています。
これらの機械を現場に持ち込む場合、安全性の確認や事故のリスクを低減するために持込機械等使用届の提出が必要です。
特に重機の使用時は、法令に基づいた資格者による操作が必須となります。
火気使用届
火気使用届は、現場で溶接や切断作業など、火気を伴う作業を行う際に提出する書類です。
火気使用に関しては、労働安全衛生法および「消防法」に基づき、火気作業を行う際には専任の監視者を配置する義務があります。
また、現場によっては自治体の条例による追加規制が存在する場合もあるため、事前に確認しましょう。
有機溶剤・特定化学物質等持込使用届
有機溶剤・特定化学物質等持込使用届は、塗料や接着剤などの有害物質を使用する際に提出する書類です。
有害物質の管理を徹底し、作業員の健康を守るために重要です。
有害物質は適切な保管場所や使用方法を徹底することで、長期的な健康被害を防ぐことができます。
【元請け企業】主要なグリーンファイル一覧

元請け企業は、工事現場全体の管理責任を負う立場として、下請け企業と協力しながら施工を進めます。
そのため、元請け企業が作成するグリーンファイルは、現場全体の施工体制を適切に管理し、安全で円滑な工事を進めるために非常に重要です。
ここでは、元請け企業が作成・管理する主要なグリーンファイルを解説します。
施工体制台帳
施工体制台帳は、「建設業法第15条の2」および「建設業法施行令第11条の3」に基づいて作成が義務付けられている書類です。
これは工事現場の組織体制を明確化し、安全な現場運営と適切な責任分担を図ることを目的としています。
例えば、元請けおよび一次下請け企業の組織体制、現場の施工計画、作業員の配置などが詳細に記載されます。
現場での安全管理や工事品質の維持に欠かせない書類であり、行政や発注者から要望に応じて提出しなければなりません。
また、施工体制台帳は、現場内の打ち合わせ室など関係者が確認しやすい場所に掲示しておく必要があります。
施工体系図
施工体系図は、前述の施工体制台帳とセットで管理される書類であり、「安衛則(労働安全衛生規則)第627条」に基づき作成・掲示が義務付けられています。
その内容は、施工体制台帳や再下請負通知書に基づいて、下請け業者の分担関係を図式化したものです。
現場で働くすべての工事関係者が、一目で施工体制を把握できるように作成されます。
- 各下請け業者の名称
- 担当する工事の種類
- 各業者の責任者名および連絡先
- 技術者の配置状況
施工体系図を掲示することで現場内での役割分担が明確になり、関係者間の連携がスムーズになります。
また、万が一トラブルが発生した場合でも、迅速な対応を可能にします。
【一人親方】主要なグリーンファイル一覧

一人親方の場合でも、労働災害防止や安全管理の観点から、元請け企業に対して一定の書類を提出する必要があります。
以下は、一人親方が提出する主要なグリーンファイルの一覧です。
書類名 | 概要 |
---|---|
一人親方労災保険特別加入証明書 | 労災保険の特別加入制度に加入していることを証明する書類。 |
作業員名簿(個人用) | 一人親方自身の基本情報を記載した名簿。 |
再下請負通知書 | 工事を別の業者へ再下請けする際に提出する書類。 |
契約書(または約款付き注文書・請書) | 元請け企業と交わした工事契約を証明する書類。 |
建設業退職金共済証紙交付辞退届 | 退職金共済制度への加入を辞退する際に提出する書類。 |
上記の中でも、一人親方労災保険特別加入証明書は必須書類であり、提出しないと現場への入場が認められないケースがあります。
さらに、建設業退職金共済証紙交付辞退届は、事業主である一人親方が労働者向けの退職金共済制度に誤って加入しないよう、事前に提出する必要があります。
グリーンファイルと併せて必要な提出書類

グリーンファイルの提出に加えて、元請け企業から求められる重要な書類があります。
これらは法令遵守や適切な労務管理を行うために必要であり、提出漏れがあると現場での作業が許可されない場合があります。
以下に、グリーンファイルと併せて必要となる代表的な提出書類を紹介します。
社会保険加入を証明する書類
建設業界では、社会保険加入が義務付けられています。
下請け企業は元請け企業に対し、従業員が健康保険や労災保険、年金などに加入していることを証明する書類を提出しなければなりません。
これらの書類の提出は、法令に基づいて現場作業員の社会保険加入状況を把握し、労務管理を徹底するために行われます。
資格証明書
資格保有者でなければ行えない作業を適切な人材が担当し、現場の安全を確保するために資格証明書の提出が求められます。
例えば、足場の組立て等作業主任者や玉掛け作業、高所作業車運転のような専門的な資格が必要です。
これらの資格証明書の写しを提出することで、作業に必要な技能を有していることを証明できます。
パスポート・在留カード
外国人作業員が現場で働く場合、パスポートや在留カードの提出が必須です。
これらは、適法に就労できる在留資格を有していることを証明する書類になります。
また、外国人建設就労者現場入場届出書と併せて提出することで、元請け企業が外国人労働者の就労状況を適切に管理できるようになります。
グリーンファイルの作成・管理を効率化する方法

グリーンファイルの作成・管理を効率化するには、「全建統一様式」やゼネコン指定書式の活用に加え、デジタルツールを導入することが効果的です。
特に、建設工事の管理に特化したクラウド型プラットフォームを活用することで、書類の作成・共有・保管が一元化され、業務効率が飛躍的に向上します。
例えば、施工前の必要なデータを一元管理するリソース管理クラウド『Photoruction Site(フォトラクション サイト)』なら、グリーンファイルの作成・管理がより簡単になります。
- 自社独自の体裁での書類作成機能(最新版「全建統一様式」にも対応)
- 企業ごとの書類のデータベースやフォーマットのカスタマイズ
- データを参照した各種書類の自動作成機能(労務安全書類や施工計画書など)
- 協力会社のアカウント作成・ログインの省略(依頼URLとパスワードを発行)
- 協力会社専用の無償機能を提供(書類の編集、PDFファイルのアップロードなど)
『Photoruction Site』は、直感的に操作できるグリーンファイル作成・管理機能に加えて、協力会社への情報共有と調整の手間を削減する機能を備えています。
協力会社に対して事前にサービス説明をする必要がないため、導入から運用までが非常にスムーズです。デジタル化による業務効率化を図りつつ、より確実な管理を実現するために、ぜひ『Photoruction Site』の活用を検討してみてください。
グリーンファイルに関するQ&A

最後に、グリーンファイルに関してよくある質問と回答をわかりやすく紹介します。
Q.グリーンファイルを作成するタイミングはいつですか?
A.建設工事の着手前に作成します。
グリーンファイルは、工事現場の安全衛生資料を一元的に管理する手段として利用されます。工事の着手時に作成し、元請け企業が工事現場の安全衛生を適切に管理することを目的とします。
Q.グリーンファイルの保管期間は定められていますか?
A.基本的に工事完了後5年間とされています。
グリーンファイルの保管期間は、工事の規模や発注者の要望によって異なりますが、基本的に工事完了後5年間です。これは、工事に関する各種記録を保存する期間として適用される一般的な基準とされます。
「建設業法第40条」の規定によって工事記録の保存が求められており、これを参考に保管期間を設定するのが一般的です。
Q.グリーンファイルは監査の対象になりますか?
A.労働基準監督署や元請業者による監査の対象になります。
「労働安全衛生法第29条」に基づき、労働基準監督署は必要に応じて現場の安全管理体制について監査を行う権限を持っています。
その際に、グリーンファイル内の書類や記録が確認されます。
まとめ
グリーンファイルは、建設現場での安全確保に不可欠な書類です。
労務トラブルや法令違反のリスクを軽減するためには、必要なグリーンファイルを把握し、適切な方法での作成と管理が求められます。
株式会社フォトラクションは、施工前に必要な労務安全書類や施工計画書などのデータを一元管理するクラウドソリューション『Photoruction Site』を提供しています。
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