【建設業向け】CIMとは?BIMとの相違点や導入メリットをわかりやすく解説
最終更新日:2025/08/14
工事現場の基礎知識

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CIMは、建設工事のさまざまな属性情報と3次元モデルを一元管理することで、現場の業務効率化を実現する注目の手法です。
建設現場のデジタル化が急速に進む中、CIMを導入してプロジェクトを効率よく推進したいと考えている方も多いでしょう。
この記事では、CIMとBIMの違いから導入メリット、具体的な導入ステップまでわかりやすく解説します。
【目次】
- CIMとは
- CIMとBIMの相違点をわかりやすく解説
- 国土交通省によるBIM/CIM原則適用の推進
- CIM導入で得られる5つのメリット
- CIM導入の課題を解決する方法
- CIM導入の具体的な6ステップ
- まとめ
CIMとは

CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトの企画段階から完成後の維持・管理に至るまで、あらゆる工程を一元的にデジタル化する手法です。
従来の図面や書類に代わり、3次元モデル上に設計情報・資材情報・施工手順・工事進捗などの属性データを統合します。
これにより、現地調査や測量で得られた地形データをはじめ、設計図面、施工計画、維持保全の履歴などを一つのプラットフォーム上で可視化・連携することが可能です。
建設プロジェクトに携わる関係者間でモデルを共有すれば、手戻りや重複作業の削減、工期短縮、コスト削減、品質向上など多岐にわたるメリットを得られます。
さらに、完成後はデジタルツインとしてインフラのモニタリングや長期的なメンテナンス計画に活用できるため、生産性向上にもつながります。
CIMとBIMの相違点をわかりやすく解説

CIMとBIM(Building Information Modeling)は混合されがちですが、両者には明確な違いがあります。
CIMは道路・橋梁・ダム・トンネル・河川・海岸・砂防など、土木インフラ全般や地形・地質情報を3次元モデル化し、設計から施工・維持管理までの一連のサイクルを総合的に管理する手法です。
一方、BIMは建築物の設計・施工・維持管理を対象として、3次元形状に部屋名称・面積・資材・部材・工程などの属性データを紐づけるソフトウェアの総称を指します。
国土交通省では、土木業務にはCIM、建設・建築業務にはBIMを原則適用すると区分して推進しています。
⇒BIMとは?他のソフトウェアとの違い、メリット、導入条件を紹介
国土交通省によるBIM/CIM原則適用の推進

国土交通省の発表により、2023年度から建設工事の設計・仕様書作成などにおけるBIM/CIMの活用が『原則適用』と定められました。
この原則適用は、発注者・受注者間で3次元モデルと属性情報を共有し、生産性を高めるスキームを全国規模で広げることが狙いです。
土木分野における国際標準化の流れも踏まえて、3次元データを活用した一貫性のある建設生産・管理システムにより、業務効率化と品質向上の両方を目指しています。
国が推進する『i-Construction』
2017年にスタートした『i-Construction』は、ICT導入で建設現場の生産性を向上させる国家プロジェクトです。
3次元設計やドローン測量、ICT建機による施工管理などが柱となり、BIM/CIMはこれらを支える中核技術として位置づけられています。
BIM/CIMによる現場データの可視化と自動化は、熟練技術者のノウハウを組織全体で共有し、業務の属人化解消と安全性の向上にも寄与します。
BIM/CIM原則適用の対象となる主な工事
現時点では、BIM/CIM原則適用となるのは、詳細設計や施工箇所の3次元モデル作成が求められる公共工事に限られています。
将来的には、国が推奨する以下の項目から順次拡大される見通しです。
- 土木設計業務共通仕様書に基づく設計・計画業務
- 土木工事共通仕様書に基づく河川工事、海岸工事、砂防工事、ダム工事、道路工事
- 関連する測量業務および地質・土質調査業務
なお、以下の工事は原則適用外となります。
- 単独の機械設備工事・電気通信設備工事、維持工事
- 災害復旧工事(ただし通常規模の公共工事では適用が求められます)
この範囲設定によって、まずは土木分野のデジタル化を着実に進展させ、モデル連携の効果検証を行いながら適用範囲を段階的に拡大していく方針となっています。
CIM導入で得られる5つのメリット

CIMの導入は、建設業界の業務効率化や発展に大きな効果をもたらすと期待されています。
プロジェクト全体の一元管理と生産性向上
CIMの最大の魅力は、企画・設計・施工・維持管理まであらゆる情報をひとつの3次元モデルにまとめられる点です。
例えば、設計変更が入ったときも、モデル内の属性値を書き換えるだけで図面や数量表が自動更新されます。これにより、複数の部署で個別に図面を修正する手間がなくなり、手戻りやヒューマンエラーも大幅に減少します。
工期短縮とコスト削減を同時に実現し、建設DXの促進にも寄与するのが大きなメリットです。
着工前に課題を洗い出すフロントローディング
着工前の段階において、コンカレントエンジニアリングによる並行作業の効率化ができます。
早期の問題発見と改善により、後工程での追加作業や資材手配の混乱を抑制し、スケジュールとコストの両面でリスクを低減できます。
さらに、安全基準への適合チェックを同時に行うことで、品質保証や法令遵守にもつながります。
コンカレントエンジニアリングによる並行作業の効率化
設計・積算・施工計画を一つのCIMモデル上で並行して進めることで、各部門のフィードバックをリアルタイムに反映できます。
数量の拾い出しの自動化により見積精度が向上し、承認プロセスの迅速化につながるのもメリットです。
こうした取り組みにより、建設プロジェクト全体のリードタイム短縮とリソース配分の最適化を図ることができます。
3次元モデルによる合意形成と透明性の向上
CIMは、従来の2D図面では把握しにくかった施設形状や地形との関係、施工手順を3次元モデル化することで、直感的な空間把握をサポートします。
例えば、公共工事で周辺住民や協力会社に工事説明をする際、CIMで可視化したデータを参照しながら議論ができるため、認識のズレを防ぐことが可能です。
こうして合意形成がスムーズになることで、関係者間の信頼構築が促進され、コミュニケーションコストの低減にも寄与します。
書類作成・維持管理業務の効率化
CIMモデルに紐づく属性情報を活用すれば、図面や工程表、見積書の自動生成が可能になります。
これにより、従来の手作業による資料作成の工数を大幅に削減できます。さらに、測量データや点検履歴を一元管理することで、維持管理フェーズで必要な情報を迅速に検索・抽出可能です。
現地での業務の前準備を効率化できるため、点検担当者による報告書の作成も簡略化されます。
CIM導入の課題を解決する方法

CIMの導入にあたっては、導入効果の認識不足やコスト・リソース面のハードルが大きな課題とされています。
ここでは、導入課題を解決する具体的な方法を解説します。
試験導入で導入効果を可視化する
まずは設計の部分や短期間の工事区間に限定してCIMモデルを試験導入し、効果を数値化する手法がおすすめです。
例えば、設計変更に要する時間や打ち合わせ回数の削減、ミス低減の度合いを記録し、社内報告会やオンライン勉強会で定期的に報告します。
このような実体験に基づく導入効果の検証により、現場メンバーの納得感が高まり、スムーズな導入につながります。
導入コストと人材育成・確保の必要性
CIM導入の初期投資やライセンス費用の負担を抑えるには、クラウド型システムや月額サブスクリプションモデルの活用が有効です。
クラウド型システムなら、専用のハードウェア導入が不要でランニングコストも定額化できるため、中小企業でも導入しやすいのがメリットです。
人材育成面に関しては、OJTとeラーニング、社外研修を組み合わせた計画的なトレーニングプログラムを実施し、持続的な人材確保とスキル向上を図るのがおすすめです。
また、CIMモデルを参照できる施工管理システムを併用すれば、情報共有がより円滑になり、建設プロジェクトの促進に役立てられます。
⇒建設業で施工管理の効率化が求められる理由!メリットやポイントも解説
CIM導入の具体的な6ステップ

建設プロジェクトにCIMを定着させるためには、国土交通省のガイドラインに準拠した以下の6つのステップを踏むことが推奨されます。
①現状分析と目標設定
まずは自社の施工管理業務フローや既存ツールを洗い出し、課題点を明確にします。
そのうえで、品質向上・工期短縮・コスト削減など、CIM導入で実現したいKPI(重要業績評価指標)を数値ベースで設定します。
この段階で得られたデータは、後工程の効果検証にも活用されるため、部署を横断したチーム編成で精度を高めることが大事です。
②人材育成とスキル強化
3次元CADやBIM/CIMソフトの扱いに慣れた人材を社内で育成します。
OJTをベースとしてeラーニングや外部研修を組み合わせ、操作スキルだけでなく、モデル運用やデータ管理のベストプラクティスも習得させることが重要です。
CIM専任チームを設置すれば、継続的なナレッジ共有体制を構築できます。
③環境整備とIT基盤構築
CIMモデルを安定稼働させるためのハードウェア・ソフトウェアを導入します。
具体的には、高スペックPCや大容量ストレージ、クラウド型CIMサービスなど、コストと拡張性を加味して最適な組み合わせを選定します。
複数の拠点との協業に課題があれば、仮想デスクトップ環境(VDI)の活用で解決することが可能です。
④小規模試行による実証導入
CIMの導入環境が整ったら、部分的なプロジェクト区間や短期間案件で運用します。
試験導入後は、設計変更や数量拾い出しなどの効果を検証し、得られた成果を定量化して報告書や社内勉強会で共有します。
小さな成功体験を積み重ねることが、現場メンバーの理解と協力を得る重要なポイントです。
⑤効果検証と継続的改善
試行段階で収集した工数削減率やミス低減率、打合せ時間の変化を分析します。
その後、分析結果に基づいてモデル運用ルールや運用フローをブラッシュアップします。
CIM運用の精度を高めるには、定期的なレビュー会での課題点の抽出や、マニュアルやテンプレートの更新など、PDCAサイクルを効果的に回す取り組みが重要です。
⑥全社展開による本格導入
試験導入の成功を踏まえて、各拠点やプロジェクト全体へCIMを適用します。
CIMを全社的に推進するためには、組織運用ガイドラインや教育プログラム、サポート体制をしっかり整備し、稼働を安定させることが必要です。
CIMの運用状況や効果を可視化する専用システムを活用すれば、戦略的な意思決定の精度を高められます。
まとめ
3次元モデルと属性情報を組み合わせたCIMは、建設DXを加速させる重要な技術です。
CIMの導入により、設計・施工・維持管理の各段階において、生産性向上と品質向上を図ることができます。
ただし、導入前には試験的な運用で効果を測定し、各部署や建設プロジェクトに最適な運用方法を見つけることが大事です。
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