BIM×AIエージェント×DX人材で変わる現場 ~建設テックの新時代を読む〜

最終更新日:2025/09/09

建設テックの知恵袋 編集室

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サムネイル_建設・建築DX EXPO2025レポート

こんにちは。フォトラクションの中島です。
7/30~8/1の3日間、東京ビッグサイトにて「建設・建築DX EXPO」が開催されました。

建設会社・ゼネコン・サブコン・設計事務所・住宅メーカーなどを対象にした様々な興味深いサービスが展示されていましたね。想像以上に来場者が多く、会場全体が活気を帯びていたことが印象的です。今の建設業界を変えたいという思い、建設DXに込める期待感が表れているようで、建設テックを牽引してきた私としては嬉しく思いました。

そんな私ですが、建設テック協会代表理事として「BIM×AIエージェント×DX人材で変わる現場 ~建設テックの新時代を読む~」という講演をさせていただきました。今回は、その内容を記事としてまとめたいと思います。建設テックの新時代を見てみたいという方は、ぜひご覧になってみてください。

【目次】

  1. 講演の全体テーマ「BIM → SaaS → “BPaaS”」
  2. BPaaS(Business Process as a Service)とは
  3. BPaaSで切り開かれる新時代
  4. デジタルゼネコンとは
  5. 建設テック協会の紹介
  6. おわりに

講演の全体テーマ「BIM → SaaS → “BPaaS”」

2010年前後に、BIM(Buildeing Information Model)の存在感が強くなってから、早15年程度が経過しました。その間に様々な使い方が試行錯誤されながらユースケースが増えたことを受け、令和4年度からスタートした、建築BIM加速化事業(国土交通省)をきっかけにBIMを導入した企業も多いことと思います。

一方、インストール不要で手軽に利用できるデジタルツールとしてSaaS(Software as a Service)が普及し、建設現場におけるタブレット端末の導入と相まって、施工管理をはじめとする建設プロセスの利便性が大きく向上しています。

BIM・SaaSとも、現在進行形で開発・適用が進められているところですが、既に建設テックはその先に向かいつつあります。これからの新時代はどういったものになるのでしょうか。

「BPaaS(Business Process as a Service)」という新たな業務プロセスに触れながら、新たな時代を予見したいと思います。

建設SaaSとは?導入メリットや選定ポイントを徹底解説

BPaaS(Business Process as a Service)とは

BPaaSとは、企業の業務プロセスをそれに精通した外部の専門業者にクラウド環境を通じて委託できるサービスです。以下に示すのは、建設プロセスにおけるBPaaSの一例です。

建設・建築DX EXPO2

建設業界においては、BIMとSaaSを複合的かつ簡単に組み合わせてプロセスを標準化することが求められています。上図のBPaaSでは、BIMマネージャーやBIMオペレーターを擁する専門業者が、AIエージェントを使いながら依頼を受け、図面やBIMから検査野帳を作成し、SaaSとして提供しています。

重要なのは、ゼネコンや設計事務所とは異なる中間的な位置にいる企業が、BPaaSを通じて建設プロセスの一部を担い、ゼネコンや設計事務所の垣根を越えてプロセスの標準化を進めることです。

従来のようにそれぞれの企業が独自のノウハウを磨き上げてハイレベルな建物を実現してきたことと同様に、これからは建設プロセスの標準化を進めて生産性向上を図ることが大切になっていくを考えています。

私個人としては、建設テックにより生産性を3倍に向上させることを目標としています。それを実現するためには、建設業に特化したBPaaSを扱える高度なサービスが増え、プロセスの標準化が進むことが重要です。

BPaaSで切り開かれる新時代

建設・建築DX EXPO3

昔、大工の棟梁が建物を請け負っていた時代は、棟梁が責任をもってすべてのプロセスを担っていました(上図:過去)。しかし、建物の高度・複雑化や責任の所在を明確にすることの必要性から、現代の建設プロセスは専門に応じて細分化されています(上図:現代)。

この細分化により各分野のプロフェッショナルが高度に発展したのは素晴らしいことですが、それぞれの企業が独立してしまい、建設プロセスがガラパゴス化するという新たな課題を生んでいます。

プロセスの標準化により生産性向上を目指す建設DXにおいては、プロセスのガラパゴス化は大きな障害になるでしょう。そこで、未来の建設プロセスでは、それぞれの企業の中間的な位置で「デジタルゼネコン(デジタル化で仕事を行う企業群、後述)」が活躍するはずです(上図:未来)。

新時代では、それぞれの分野のプロフェッショナルが専門性を発揮しながら、彼らの生産性向上をサポートするデジタルゼネコンが潤滑油として機能すると考えています。

デジタルゼネコンとは

前節で、「デジタル化で仕事を行う企業群」を「デジタルゼネコン」と表現しました。これは私が構想している新時代の新たな業態です。ここでは、デジタルゼネコンの概要をご紹介したいと思います。

デジタルゼネコンのアイデア

デジタルゼネコンとは、テクノロジーとデータを駆使して建設を支援する新しいスタイルの建設会社(Digital General Constructor)です。デジタルゼネコンは、建設プロセスの標準化によりデジタルツールを活用したスマートコンストラクションの実現をサポートします。

これにより、設計者や施工者はノンコア業務から解放され、設計や施工管理といったコア業務に集中できるようになり、大きな生産性向上効果を得られます。

デジタルゼネコンのスタイル

デジタルゼネコンには、大きく分けて3つのスタイルがあると考えています。

建設・建築DX EXPO5
デジタルゼネコンのスタイル
  • サプライ型:既存の建設会社にサービスを提供するスタイル
  • トランスフォーム型:既存の建設会社のデジタル化をサポートして業務プロセスを効率化するスタイル
  • インクルード型:現在の協力会社のように、一つの企業として建設プロセスに参画するスタイル

これらのサービスを使って生産性向上を図るには、自分なりのDXビジョンを持ってBIM・SaaS・BPaaSを活用することが大切です。これからの新時代で活躍するDX人材は、「適切なDXビジョンを描き、実行に移せる人」だといえるでしょう。

なぜデジタルゼネコンが活躍するのか

建設プロセスの潤滑油として機能するデジタルゼネコンが新時代で活躍すると考える理由は、現在の建設プロセスにおける生産データの扱いにくさにあります。

建設・建築DX EXPO6

BIMやSaaSが登場したにもかかわらず、なぜ生産性が上がらないのでしょうか。私は、生産データの扱いにくさが原因のひとつだと考えています。現在の生産データが扱いにくい主な理由は以下のとおりです。

生産データが扱いにくい主な理由
  • ①現地・現物でしか出来上がったモノが存在しない
  • ②一品生産であり、プロジェクトによって内容が異なる
  • ③関係者が多く、必要な情報量が多い

プロジェクト毎に少しずつ異なる方法で生産データを扱っているため、多くのプロジェクトでBIMやSaaSのメリットを生かし切れていないのが実情です。生産性を向上させるためには、生産データをうまく活用し、少ない労力・時間で付加価値を生まなければいけません。

建設・建築DX EXPO7

人材不足という課題を抱えている現状を踏まえると、大切なのは以下の2つです。

  • 「データ」を標準化して扱いやすくする
  • 「プロセス」を標準化して効率を高める

それぞれの企業の中間に位置するデジタルゼネコンは、データ・プロセスの標準化によって付加価値を生み出す生産性向上のプロフェッショナルといえます。それぞれの分野のプロフェッショナルとデジタルゼネコンがお互いの良さを引き出せたとき、建設業界は新時代を迎えることでしょう。

建設テック協会の紹介

最後に、私が代表理事を務める「一般社団法人建設テック協会」をご紹介します。

建設テック協会は、「テクノロジーによる建設産業の更なる発展を目指したエコシステムを創出する」という理念を掲げて活動しています。2022年の設立以降、徐々にニーズを増やし、大手・準大手ゼネコンやメーカー、IT企業、建設テック企業、スタートアップ、大学など、約35個の団体が参加する協会になりました。

大切にしている価値観

建設・建築DX EXPO8

建設テック協会は、成果物を定めてキッチリ進めるというよりも、雑談や情報交換などをベースに「緩くやる」スタイルをベースとしています。建設テック界隈のコミュニティをつくり、新しいアイディアを出し合いながら、実現が難しそうなことでも挑戦を後押しすることが目的のひとつです。

建設テック協会の活動

建設テック協会の主な活動は、「建設テックゼミ」「建設テックCG(コミュニティ・グループ)」「建設テックAtoZ」の3つです。

●建設テックゼミ

建設・建築DX EXPO9

建設テックゼミは、学生を中心とした活動です。月に1回程度の頻度で、建設テック協会に参加している企業が講師となり、学生に建設業界における働き方を知ってもらったり、実際に建設テックを触ってもらったりといった活動をしています。ここで得た経験をもとに学生が研究を行うなど、学生の学習機会として好評です。

●建設テックCG(コミュニティ・グループ)

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建設テックCGは、民間企業を中心に3ヶ月に1回のペースで開催している建設テックのコミュニティイベントです。30~40人で集まり、ゼミ形式で企業に最新事情の話題提供をしてもらった後、懇親会を行っています。昨年は有楽町のTiB(Tokyo Innovation Base)にて100人規模のトークイベントを行うなど、建設テックに興味のある方にとって新しいアイディアのきっかけとなるような活動になっています。

●建設テックAtoZ

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建設テックAtoZは、建設テック領域で起業を目指す方や事業に取り組む方に向けたpodcastです。これから建設テックに取り組む方でも理解しやすい建設領域の解説や、建設関連のニュースなどを提供しています。

おわりに

建設業界は新時代に向けて歩き出しています。不安と期待が入り混じる中、大小問わず様々な企業が使命感を持って取り組んでいるのが分かる展示会で、私もいい刺激をもらいました。よりよい建設業界に向け、ともにがんばっていきましょう。

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