建設業のBPR推進を阻む3つの壁と処方箋

建設テックの知恵袋

斎藤寛彰(Saito Hiroaki)

1987年生まれ。戸田建設株式会社にて,建築施工管理,エンジニアリング,BPR/ICT戦略,経営企画などを経験し,現在はオープンイノベーションやスタートアップ投資,新規事業開発などを担当する。東京工業大学大学院修了。修士(工学),技術経営修士(専門職)

各プロジェクトで得られた成功事例は、本社機能で標準業務プロセスに組み込んでいく活動が重要
(Gann, D.M. and Salter(2000)を参考に筆者作成)

壁その3:”一品生産だから標準化は無理”という因習的思考

三つ目は,建築や土木構造物が“一品生産”であることを理由に,生産システムや業務プロセスが標準化、工業化されにくいと考えられがちな点である。

たしかに、“一品生産”という性質は,建設業界の生産における特徴的なポイントではあるが本当に改革や標準化を阻む根源的な理由と言えるだろうか。

ここで製造業の生産及び管理プロセスと比較して考えてみたい。

製造業のそれは建設業と比較して相対的に少品種多量生産が多く、システマチックに構成されていると考えている方が多いだろう。

しかし中には多品種少量生産のプロダクトもあり、近年のマスカスタマイゼーションの名の下,それは増加傾向にある。

製造業では工学の一分野を構成するIE(Industrial Engineering)が発展していることもあり,多品種少量生産に適した合理的な生産・管理方式が選択され適用されているのである。

製造業での取り組みを踏まえると、建設における「“一品生産”だからできない / 難しい・・・」というのは標準化を妨げる理由としては不適切な場合もありそれに適した生産・管理プロセスを見出すことは可能である。

処方箋:

生産システムや業務プロセスにおける構成要素をブレイクダウンしていき、共通項を見つけベストプラクティス、標準プロセスに落とし込んでいくポイントを見つけ出すことが重要である。

確かに建築物の平面プランや材料,仕上などは膨大な種類が存在し,その組み合わせの数は計り知れないが,どの建築物でも多くの場合躯体は木か鉄骨,鉄筋コンクリートなど共通する要素は存在する。

あらゆるプロジェクトに威力を発揮する万能な改善は多くはないかもしれないが,共通項を見つけて適用することの積み上げがBPRに繋がるのである。

挙げ出すと他にも出てきそうではあるが,一旦今回はここで締めくくらせて頂こうと思う。

建設業界でこれから業務改革・業務改善に取り組もうとされる方にとって、少しでも参考になれば幸いです。

参考文献

Gann, D.M. and Salter, A.: Innovation in Project-Based, Service-Enhanced Firms: The Construction of Complex Products and Systems, Research Policy, 29, pp-955-972, 2000.8

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