施工管理アプリでラクになる配筋検査。実務で施工管理を経験した一級建築士が解説!

最終更新日:2024/10/02

オキハラ

1級建築士。 東京大学、同大学院にて建築を学んだのち、株式会社竹中工務店に就職。 構造設計を専門とし、ホテル・事務所・研究所・工場などを設計。 退職後、ライターとしての活動を開始。 建築・不動産をはじめ、幅広いコンテンツで執筆中。

2024年から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、さらなる生産性向上が求められています。現在は、生産性向上の実現に向けた建設DX(デジタルトランスフォーメーション)の過渡期です。

建設DXを機に、さまざまなツールやシステムが登場しています。なかでも施工管理者の負担を軽減するツールとして期待されているのが、施工管理アプリです。施工管理アプリの機能は千差万別ですが、「工事写真の撮影・管理」と「配筋検査支援」の機能が特に人気を集めています。工事写真の管理や配筋検査の準備は、施工管理者の大きな負担であるため、これらの作業を支援する適切なツールを導入することで、生産性向上を期待できます。

今回は、実務で施工管理を経験した一級建築士である筆者が、施工管理アプリの導入でラクになる配筋検査のポイントを紹介します。ぜひ参考になさってください。

そもそも配筋検査とは

配筋検査のアプリについて解説する前に、配筋検査の概要を紹介します。配筋検査は、建物の品質を確保するうえで欠かせないプロセスです。しっかりと検査・記録を行い、建築主に安全・安心な建物を提供できるようにしましょう。

配筋検査の目的


配筋検査の目的は、コンクリートを打設する前に配筋状況を確認して不具合箇所を是正し、その記録を残すことです。施工管理者は、現地の状況と設計図書を照らし合わせながら自主検査記録の作成と工事写真の撮影を行います。

工事を設計図書と照合し、設計図書のとおりに実施されていることを確認する役割である工事監理者は、施工管理者の自主検査記録と現地の確認によって、その職務を遂行します。配筋は、コンクリート打設後には隠蔽部となり直接確認することは不可能です。そのため、施工管理者がしっかりと記録を残すことで、工事監理者は工事と設計図書を照合できるようになり、建築主が安心して建物を受け取れるようになるのです。

配筋検査のチェック項目


以下に、配筋検査のチェック項目の例を紹介します(表1)。

表1 配筋検査のチェック項目の例

ここでは代表的な項目を簡略的に表現していますが、実際には設計図書に示されている詳細な配筋要領を漏れなく確認する必要があり、非常に手間と時間がかかる作業です。しかし、工期が厳しいプロジェクトでは、配筋検査の時間を2~3時間しか確保できないケースもあり、検査で発見された不具合の是正作業が所定労働時間を超えてしまうことも珍しくありません。

適正工期の設定が大切であることはもちろんです。一方で、配筋検査の手間を減らして施工管理者や専門工事業者が働きやすい環境を整えるためにも、少ない手間と時間で配筋検査を実施できるツールやアプリが求められています。

配筋検査で必要なモノ


従来の配筋検査では、以下のようなモノが必要です。

設計図書
配筋検査野帳(配筋検査を補助するチェックリスト)
コンベックスルール(メジャー)
カメラ
工事黒板
磁石

このなかで、施工管理者のストレスになっていたのが、設計図書・配筋検査野帳・工事黒板の3つです。その理由のひとつは、雨天での使用性が著しく悪いからです。設計図書と配筋検査野帳は雨でボロボロになり、濡れた工事黒板にはチョークで文字を記入することができません。一部の施工管理アプリはこれらの3つを機能として搭載しています。多くの施工管理者が、雨の日のストレスから解放されたことでしょう。

施工管理アプリで配筋検査がラクになるポイント5選

前述のとおり、施工管理アプリの登場で施工管理者は雨の日でも配筋検査をしやすくなりました。ここでは、他にもぜひ知っていただきたい施工管理アプリのメリットを5つ紹介します。アプリによって搭載している機能が異なるので、アプリ選びの参考になさってください。

①自主検査記録の作成・管理がラク


配筋検査の自主検査記録は、事務所で検査の結果をエクセルに入力し、印刷して保管する流れが一般的でした。不具合や是正の状況を思い出しながら入力する必要があったので、記録のミスや是正対応の漏れに繋がっていたのが実情です。

書類・帳票機能を搭載している施工管理アプリを使うと、タブレットやスマートフォンなどの端末を使い、現場で検査記録を入力することができます。検査・是正と同時並行で進められるので、正確な検査記録と確実な是正が可能です。また、クラウドベースの施工管理アプリであれば、作成した自主検査記録が自動的に分類・保管されるケースが多く、ラクに管理できます。

②配筋検査野帳の作成がラク


従来は、エクセルやパワーポイントを使い、設計図書を貼り付けながら施工管理者が配筋検査野帳を自作していました。配筋検査の事前準備としてお馴染みの作業ですが、施工管理者の過度な時間外労働の大きな要因といえます。

一部の施工管理アプリは、配筋検査野帳をはじめとした書類や帳票のテンプレートを多数搭載しています。これらのテンプレートを活用すれば、ラクに配筋検査野帳を作成することができます。

③工事写真の撮影・管理がラク


スマートフォンやタブレットだけでカメラと工事黒板を扱えることも、施工管理アプリのメリットのひとつです。工事黒板を内蔵したカメラ機能により、ラクに工事写真を撮影できます。カメラと工事黒板を持ち歩く、工事黒板にチョークで記入する、工事黒板と対象物の距離感を調整するなど、多くのストレスから解放されます。

また、クラウドベースの施工管理アプリでは、工事写真を撮影するときに属性やカテゴリーを設定することで自動的に分類・管理してくれるケースがあります。工事写真の管理は施工管理者の大きな負担になっていたため、アプリを導入することで生産性向上を期待できるでしょう。

④図面の管理・確認がラク


一部の施工管理アプリは、クラウド上で図面を管理する機能を搭載しています。最新図面が発行されたときにはクラウドを介して素早く共有できるため、情報の入れ違いの予防が可能です。また、最新図面が明確になり、古い図面を参照したことに起因する施工ミスや手戻りを防げます。

タブレット内のアプリで図面を見ることができるので、現場で重い図面を持ち歩く必要がありません。タッチペンで図面に文字や線を書き込む機能を搭載していれば、現場におけるコミュニケーションがしやすくなります。

⑤計測がラク


現在は大手・準大手ゼネコンなどが開発している配筋検査システムに限られますが、長さや鉄筋の間隔をカメラで自動認識できる機能が実現しています。従来はメジャーを使って長さを計測し、目盛を読み取れるようにカメラで撮影していましたが、配筋検査システムだけで簡単に計測・撮影が可能です。

市販の施工管理アプリに実装されれば、施工管理者の負担がさらに軽減されることになるでしょう。

施工管理アプリで得られる配筋検査の生産性向上効果

ここで、施工管理アプリで得られる生産性向上効果の一例として、当社のサービスの事例を紹介します(図1)。

図1 photoructionのサービスを利用した場合の生産性向上効果

工事黒板の作成はBPOサービス(プロによる外部委託サービス)を利用している事例ですが、写真の撮影・整理の時間が大きく削減されています。

配筋検査においては、「黒板の作成」「配筋野帳の作成」「写真の撮影・整理」「自主検査記録の作成」が主な業務フローです。これらに対して、以下の生産性向上効果を期待できます。

搭載している機能によって得られる生産性向上効果は異なりますが、多くの施工管理アプリがそれぞれの業務フローに対して効果的な機能を搭載しています。時間外労働に繋がっている作業を特定し、生産性向上に効果的なアプリを選ぶようにしましょう。

終わりに

配筋検査と写真管理は、施工管理アプリの導入で特にラクになる施工管理業務です。事務所でのノンコア業務を大幅に削減することができ、施工管理者の時間外労働削減に繋がります。また、正確な自主検査と漏れのない是正対応が可能になり、品質向上も期待できます。生産性と品質を両立できる施工管理アプリの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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