施工体制台帳の作成義務を解説!対象工事や課題、注意点も紹介
最終更新日:2025/05/22
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建設テックの知恵袋 編集室
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施工体制台帳は、工事の品質や工程、安全などを把握し、施工トラブルを防止するために重要な書類です。該当する工事を受注した元請会社は、建築業法によって施工体制台帳の作成が義務づけられています。
施工体制台帳の作成にあたって、「なぜ作成が義務づけられているのか?」「作成には何が必要なのか?」など疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、施工体制台帳の作成義務やその背景、課題、注意点を紹介します。
【目次】
施工体制台帳の作成義務とは

施工体制台帳は、工事を請け負うすべての会社名と施工範囲、工期、各工事の担当者名などを記載している台帳です。
特定の条件を満たす工事では、施工体制台帳の作成が義務付けられています。
ここでは、施工体制台帳の作成義務について解説します。
施工体制台帳の作成義務がある工事
施工体制台帳は、以下の条件に当てはまる工事で作成義務があります。
- 発注者から直接建築工事を請け負った特定建設業者が、当該工事に関して締結した下請金額の総額が5,000万円(建築一式工事:8,000万円)以上
- 公共工事の場合、発注者から直接請け負った建設工事に関して下請契約を締結
なお、2025年2月から施工体制台帳の作成義務となる下請金額の下限は、4,500万円(建築一式工事:7,000万円)から5,000万円(建築一式工事:8,000万円)に引き上げられています。
公共工事では、下請け金額にかかわらず施工体制台帳の作成が義務付けられています。
施工体制台帳の作成が義務化されている理由
施工体制台帳の作成が義務化されている理由は、以下のトラブルを防止することが目的です。
- 品質、工程、安全など施工上のトラブル発生を防止
- 責任の所在の明確化
- 不良、不適格業者の参入や建設業法違反の防止
- 重層下請の防止
施工体制台帳は現場の安全や品質、工程管理を徹底し、法律遵守や適正な施工体制を確保するために義務化されています。工事現場ではさまざまな業種や会社が同時に作業を行うため、元請会社は施工体制などを明確にし、適切な管理が必要です。
施工体制台帳の保管義務
施工体制台帳は、建設業法施行規則により帳簿の添付書類として5年間保存しなければならないと規定されています。
例外として、新築住宅の建設工事に関するものは10年間の保存が必要です。
そのため、工事が完了した後も一定期間は施工体制台帳を廃棄できないため注意しましょう。
保管義務が求められる理由は、工事後の不具合や事故発生時の責任追及に対応するためです。また、監査や調査において施工体制台帳が必要になる場合もあります。
下請金額の下限が引き上げられた背景
施工体制台帳の作成を義務づける下請金額の額が引き上げられた理由として、昨今の資材費や人件費の高騰が挙げられます。
建設業界では慢性的な人手不足や若年層の低下により人件費が上昇し、さらには資材費も高騰しているのが現状です。従来の基準額では現場の実態に合わなくなり、多くの工事が対象となるため、基準額の見直しが行われています。
なお、施工体制台帳の作成を義務づける下請金額は過去に以下のように変更されています。
- 2023年1月まで:4,000万円(建築一式6,000万円)
- 2023年2月~2025年1月まで:4,500万円(建築一式7,000万円)
- 2025年2月~:5,000万円(建築一式8,000万円)
これらの改定は建設工事の現場運営における透明性を高め、責任体制を明確化することが目的です。
施工体制台帳の作成義務に違反した場合
施工体制台帳の不作成や虚偽記載は、『建設業法第28条』に基づき営業停止処分の対象となる可能性があります。
違反の内容や程度によっては、さらに重い処分が科される可能性もあるため注意が必要です。また、公共工事においては下請金額の大小に関係なく、必ず施工体制台帳を作成しなければならない点にも注意する必要があります。
施工体制台帳を作成する際の注意点

施工体制台帳を作成する際には、いくつか注意するポイントがあります。
ここでは、施工体制台帳の作成で知っておきたい注意点を解説します。
記載事項を漏れなく記入する
施工体制台帳には、建築業法施行規則で定められた記載事項をすべて記載しなければなりません。
記載漏れがあると発注者から指摘を受けるほか、内容によっては営業停止処分を受ける可能性もあります。記載事項を漏らさず記入し、提出前に内容の抜け漏れがないかチェックリスト等で確認しましょう。
なお、施工台帳の記載事項や効率的な作成方法は以下の記事で詳しく解説しています。
⇒施工体制台帳とは?記載事項から効率的な作成方法までわかりやすく解説
保管方法の注意点
施工体制台帳は5年間の保管義務があるため、その期間中はいつでも取り出せるように適切に保管することが大切です。
工事期間中は工事現場ごとに備えおくことが義務付けられていますが、工事完了後は担当営業所で保管します。また、関係者が必要に応じて閲覧できるように、わかりやすい場所に保管することも重要です。
紙媒体での保存になると紛失や探し出すのに手間がかかるため、電子データでの保存をおすすめします。電子データで保存することで管理の手間や紛失のリスクを防止できます。
常に最新情報に更新する
施工体制台帳は常に最新情報に更新する必要があります。
工事の進行に伴い、協力会社や技術者が変更になった場合には、施工体制台帳も更新しなければなりません。更新が遅れてしまうと、施工体制台帳の信頼性が失われてしまい、法令違反と見なされる可能性があります。
トラブルを防ぐためにも、現場の状況に応じて、すべての変更を漏れなく速やかに反映させることが大切です。
施工体制台帳の課題

施工体制台帳の義務化に対応するためにはいくつか課題もあります。
ここでは、施工体制台帳の課題を解説します。
情報共有の環境
施工体制台帳は、元請会社から協力会社までの施工体制を把握するための書類ですが、情報共有が難しいという課題もあります。
具体的には、作成フォーマットが統一されていないことで、各社で記載内容や様式が異なり、情報のやり取りが煩雑になりやすいことです。さらに紙ベースの場合だと、現場や事務所間の情報伝達に時間がかかり、リアルタイムな共有ができません。
情報共有ができないと、工程の遅延やトラブル、安全性の低下など重大な影響を及ぼす可能性があります。これらの課題を解決するためには、施工管理クラウドを導入し、インターネットで情報を共有する仕組みを整えることが有効です。
保管にスペースが必要となる
施工体制台帳は工事完了後も一定期間保管が必要となり、紙媒体の場合は場所の確保も必要となります。
施工体制台帳を紙で管理するとかなりのスペースが必要となり、台帳の紛失や破損のリスクも高まります。
保管スペースを抑えるためには、不要な書類の整理・廃棄が有効です。しかし、誤って必要書類を廃棄するリスクがあるため十分に注意する必要があります。
スペースの問題を解決し、間違って必要書類を処分するリスクを減らすためには、電子化やクラウドストレージの利用がおすすめです。
担当者の負担増加
施工体制台帳の作成には担当者の負担増加という課題もあります。
施工体制台帳の作成や管理は、元請会社が協力会社や作業員の情報を正確に記載・更新しなければなりません。近年は法改正によって台帳に記載すべき内容も増えており、作業員名簿の添付や管理技術者補佐などの情報追加も必要です。
また、頻繁に更新が必要になるケースも多く、特に協力会社や作業員の入れ替わりが激しい現場では記載漏れが発生しやすくなります。担当者の負担が増えるとミスが起きやすくなり、台帳の記載内容に誤りが生じるリスクも高まります。
施工体制台帳の作成にかかる担当者の負担を軽減するためには、デジタル化や業務効率のツールの活用がおすすめです。
施工体制台帳の作成義務に対応するおすすめのツール

施工体制台帳の作成義務に対応するためには、施工管理クラウドの活用をおすすめします。施工管理クラウドを用いることにより、施工体制台帳を効率的に作成・保管することが可能です。
ここでは、施工体制台帳の作成や管理の手間が大幅に削減できる施工管理クラウド『Photoruction Site(フォトラクションサイト)』をご紹介します。
Photoruction Siteとは
Photoruction Siteとは、労務安全書類や施工計画書など施工前に必要となる書類の作成や管理を行うことができるクラウドサービスです。

Photoruction Siteは、データを読み込むことによって、施工体制台帳や労務安全書類を自動作成できます。記載漏れや転記ミスを防止し、企業ごとに独自のフォーマットやデータベースを設定でき、国土交通省の最新フォーマットにも対応可能です。
アカウント登録なしで複数の会社間で利用可能
Photoruction Siteは、協力会社は無償で活用できることに加えて、依頼URLとパスワードを発行することでログインなしで利用可能です。

工事の元請や一次請となる会社は、協力会社の数も多く、システムを活用してもアカウントを発行して使い方を覚えてもらうためには手間がかかります。
Photoruction Siteでは、アカウント登録しなくても協力会社が利用できる仕組みを提供し、これによって協力会社との事前調整にかかるコスト削減を実現しています。
また、アカウント登録をするとさらに便利に利用でき、元請だけでなく一次請をメインとしている建設会社にもおすすめです。
データベースが構築できる
Photoruction Siteは、現場リソースに関する情報をマスターベースとして保持し、各社でカスタマイズすることも可能です。建築業では扱う情報が多岐にわたるため、独自でデータベースを構築することは簡単ではありません。
その点、Photoruction Siteは書類とリンクさせる機能を用いることで、書類を作成しながらデータベースを構築できます。データベース化された情報は、他の書類作成時にも再利用でき、業務の重複や記載ミスなどを削減します。
多様な機能を搭載
Photoruction Siteは、以下のように多彩な機能を搭載しているのも特徴です。
機能名 | 概要 |
---|---|
プロジェクト管理 | 建設プロジェクトごとに関連データを管理 |
書類作成 | 電子化した書類を直接確認できる書類ビューと、データ入力フォームを同時に確認できるDLD機能を搭載 |
協力会社管理・連携 | URLひとつで協力会社とデータのやり取りや書類作成依頼が出せる |
施工体制 | 建築プロジェクトにおける協力会社をツリー状に表示・管理できる |
労務安全 | 労務安全書類を簡単に作成・管理できる |
データベース | 会社やプロジェクトに関する情報を構造化されたデータベースとして管理できる |
Photoruction Siteを導入することにより、施工体制台帳を始めとするさまざまな関連書類の作成や管理、情報共有がしやすくなります。現場負担が軽減されることで、ミスを防止することにもつながるでしょう。
まとめ
施工体制台帳は、工事における関係者や作業範囲をまとめた書類です。
施工トラブルの発生や不良・不適格業者の参入、建築業法違反の発生などを防ぐことを目的に作成が義務化されています。
施工体制台帳の作成や管理、保管には手間がかかるため、業務効率化のために施工管理クラウドを活用するのも方法の一つです。
株式会社フォトラクションが提供する『Photoruction Site (フォトラクションサイト)』は、施工体制台帳の作成や管理、保管を効率化できる施工管理クラウドです。
施工体制台帳の作成や管理業務を大幅に効率化し、協力会社との調整や情報共有もスムーズに行います。
現場への操作説明会や電話対応など、サポート体制も充実しています。まずはお気軽にお問い合わせください。