現場監督が使い易い現場支援サービスが生産性向上と働き方改革を推進

矢作建設工業株式会社 建築事業本部 施工本部 工務部 係長 太江 慎吾 氏

矢作建設工業株式会社

愛知県名古屋市に本社を置き、東海地方を代表する総合建設会社の1社であり、建築や土木工事の企画・設計から施工、コンサルティングまで幅広く手掛ける矢作建設工業様。 業務の効率化と生産性向上のため、ICT推進にいち早く全社的に取り組み、BIMの活用と推進にも3年ほど前から本格的に着手しているほか2018年9月には、エンジニアリングセンターに研究棟を新設し、各種構造分野の技術開発だけでなく、ICT技術の現場導入を進め、業界の垣根を超えた研究開発も行っています。 「Photoruction(フォトラクション)」を、建設現場で活用し効率を上げている実際の様子や、導入にあたって工夫した点などについて矢作建設工業の太江慎吾氏にお話を伺いました。

Photoructionを導入されたきっかけを教えてください

私の所属する建築事業本部施工本部工務部は、主に施工計画の立案を担当しています。当社のBIMへの取り組みは、当初は設計を意識せず施工独自にスタートしました。
現場の足場や鉄骨建方などの仮設計画をBIMで計画するとともに、BIMのコンポーネント(部品)も自社で作成するなど、すべて内製で行っているのが特長です。現在は設計施工一貫BIMを実物件で運用開始しており、連携強化することでさらなる生産性向上に取り組んでいます。BIM活用の目的は生産性向上でありBIMはICTの一部として、あくまでも働き方改革の一端を担うという考えです。
BIMを中心にICT推進に取り組んでいますが、より幅広く業務の効率化を進めるために導入したのが「Photoruction(フォトラクション)」です。
2年半ほど前に参加した日本建設業連合会のセミナーで紹介されたことをきっかけに興味を持ち、試験的に使用をはじめ、現在では規模の大小を問わず、新規に着工するすべての現場でPhotoructionを導入しています。

Photoructionの導入を決めたポイントはどこですか

Photoructionで最も気に入っているのは、BIMと性格が似ている点です。
BIMは“I”すなわち“情報”の部分を上手に活用することがポイントで、BIMモデルにさまざまな情報を付加し、それらの情報をうまく活用することで実際の現場でも効果が得られます。Photoructionも、写真にどんどん情報を付加するイメージで、情報が蓄積されるのが良いところです。
これまでは別の写真管理ソフトを使い、帳票の整理は文字を手打ちで入力していました。Photoructionではあらかじめ電子小黒板を設定しておけば、工事写真台帳で写真を整理する時に情報が入っていきます。別の帳票を出すときにも新たな情報が付加され、情報を一度入れていればずっと引き継がれるのです。情報を最大限に活用するというコンセプトに共感しています。情報が大事にされていて、BIMの考え方と親和性が高いと感じています。

Photoruction連携のイメージ

Photoructionの電子小黒板の機能について説明する太江氏の様子

Photoructionの画面

写真撮影で検査と整理が同時に自動で行われるメリットとは

ICT活用の基本的な方針として、ICTを通じた変革期の中で、人とコンピュータの棲み分けは常に意識し、目的なく流されることがないように気を付けています。ICTを使用する際、最終的なデシジョンの部分は人間が行わないといけませんが、すべてを判断する必要はありません。コンピュータは繰り返し作業が速く正確で、基本的にヒューマンエラーが起こることはありません。単純な情報を入れ込むような作業は、コンピュータに任せるのが大事だと考えています。
これまで、写真に位置情報を付加するソフトと検査するソフトは、別々のものを使用していました。Photoructionは検査をしながら写真を撮影でき、さらに図面も見ることができるオールインワンに近い形のため、効率的でヒューマンエラーも防ぐことができます。
現場で撮影した写真はPhotoruction内で自動的に整理され、大分類、中分類、小分類といった写真の分類分けや、工種を使用者が設定できるようになっています。自社で管理したいようにカスタマイズでき自由度が高いので、各社にマッチするのではないでしょうか。
写真の分類とカテゴリーについては最初に設定する必要がありますが、プラットフォームが整えば位置情報をつけて撮影するのみとなり、現場監督などを含めて誰でも対応しやすいです。

社内で普及させるためにどのようなことを行いましたか

社内で普及させるにあたって、Photoructionの意図を汲むことができるキーパーソンを選び、少しずつ導入しました。
現在では会社全体として、現場に出る若手社員を中心に、BIMに加えてPhotoructionの研修を行ってます。
写真の撮り方から、情報の付け方、書類やファイルの整理の仕方までを教えています。これらは現場ごとに違いが出がちなのですが、データを活かし効率を高めるには統一して整理することが欠かせません。情報が大事、という感覚を共有しています。
その甲斐あって着実に現場での導入は進みました。Photoructionは誰でも簡単に扱えるように設計されているので、今では若手からベテランまでが使えています。

導入後はどのような変化がありましたか

導入後については、例えば矢作建設工業で施工する一般の規模のマンションの工事現場で、RC造の躯体工事が1フロア2週間ほどのサイクル工程で進捗する中、1フロアごとに品質検査を受ける必要があります。現場監督は写真の撮影・整理・出力などのルーティンワークに追われ、こなせないと日ごとに業務が積み重なっていきます。
Photoruction導入後は効率的に写真管理業務を行うことができ、飛躍的に改善されました。現場の労務の歴史をたどってきた側から見ると、効率化を感じます。

クオリティを落とさずに業務の効率化を推進し働き方改革を実現

当社の働き方改革は、クオリティを落とさずに業務の効率化を進めることがポイントです。最近、工事の管理項目を見直す機会がありました。品質管理の“品質”を保つことは欠かせませんから、管理項目は3%程度しか減らせませんでした。働き方改革において、単純に業務を減らすことは間違いで、品質管理を“効率的”に行うための方法を見直さなくてはなりません。
そのためには、以前の価値観にとらわれないことも大事です。私は、入社から6年間程は現場を担当していました。そのため、これまでやってきたことを変えずにこうあるべきという声も大切だと思っています。けれど、それは本当に必要なのかと検証し、本質を見直すことが大切で、そうしなければ次には進めません。
もちろん新しいツールの導入時には最初は反発を受けることもありますが、私の世代が中心になってICTを推進していくことで、上と下の世代を繋ぎ、より良い職場環境を作れるようにしていきたいと思っています。

Photoructionの画面

今後Photoructionに期待することはどのようなことですか

本社にいても、現場の様子や進捗が把握できるのはメリットです。Photoructionは、社内にいる人間と現場をつなぐツールになっています。
現場の品質管理をPhotoructionで確実に行う運用にしていきたいです。
また、人の手では、全数検査は難しいです。現場で、Photoructionを利用し全数検査が行われることが、さらなる品質管理につながるはずです。
タスク機能に管理するチェック項目を入れ、検査し、写真もタスクの中に入り、すべての情報が入るようなイメージを持っています。
クラウドサービスで随時アップデートされるPhotoructionは、サービスを提供する側として柔軟な姿勢も良いですし、今後の現場管理のプラットフォームになってくれることを期待しています。